このコーナーでは何度か登場している、我が家に欠かせない朝ドラ。現在は「虎に翼」が放送されています。今月のはなのぼうが出る頃は、ちょうどお話の折り返し地点というところでしょうか。
 ある日の放送で、主人公の母親・はるさんの、日記を書いている場面がアップになりました。すらすらと書いた文字は「何だらう(だろう)か」。ここで不思議に思ったのが、「何たらうか」と書き切ってから濁点を書いたこと。通常、点字では濁点を付けるかなの直前のマスに濁点を打ちます。墨字では、濁点を打つかなを書いた直後に濁点を書きます。ところが、ドラマでは先ほどの通り、一文節を書き切ってから濁点を書いたのです。

 諸事情により一旦辞めたものの、書道のお稽古を再開した(これまたコーナー常連の)娘にこの話をしたところ「あぁ~、そうそう」。「行書って、文字を続けて書いていくから、途中で濁点を打ったらその『流れ』が切れるやん。そやし、切れのいいとこまで書き切って、んでから濁点を打つねん」。ほほう、なるほど。
 書道で教わる漢字の書体には、歴史の古いものから篆書、隷書、草書、行書、楷書があり、現在、最もよく使われるのが楷書です。願書や履歴書、役所に提出する書類など、「楷書でご記入ください」という、あの「楷書」です。文字を構成する点や線、はらいなど、一画一画がはっきりしています。行書や草書は、篆書を読みやすくした隷書から派生した文字ですが、スピードを重視して作られた草書に比べ、行書はまだ楷書に近く、字のつながりがあるとはいえ、読みやすい文字です。はるさんは、この行書とかな交じりで日記を書いていました。

 さて、今回の主人公のモデルは、三淵嘉子さん。当館では、先月ご紹介した「三淵嘉子 日本初の女性弁護士」をテキストデイジーで製作しています。なお、ノベライズ版は音声デイジー、テキストデイジーでサピエに随時アップされています。いずれもどうぞ、ご利用ください。

(はなのぼう6月号より)