京菓子をいただく
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田道間守(たじまもり)。古事記や日本書紀に登場する人物です。
不老長寿の薬「非時香菓」(ときじくのかくのみ)を手に入れよとの勅命を受け、海の彼方の常世(とこよ)の国に渡り苦節10年、ようやくこの実を持ち帰ったものの天皇は既に崩御。悲しみのあまり陵墓の前で殉じて果てたとされています。
このとき持ち帰ったタチバナの果実が、日本の「果子(かし)」の起源とされ、菓子の字があてられるようになります。
その後、中国大陸から唐菓子、砂糖や蜂蜜などの甘味料、時代が下って宣教師などから南蛮菓子が伝来し、喫茶文化の広まりと製菓技術の向上が相まって、日本人の嗜好・感性・宗教観に合った、いわゆる和菓子が各地で作られ、それぞれの地域で銘菓が誕生します。
なかでも京菓子は、都の文化に培われた菓子職人の優れた技によって、味や姿が格別の趣をもつ菓子として磨かれていきます。
情報ステーションでは秋の恒例行事「ほっこり散策」で、この京菓子作りに挑みます。挑むというより、利用者の皆様やボランティアの皆様と職員が一緒になってお菓子作りを楽しもうという企画です。皆様方の楽しまれる姿や京菓子の魅力などをご報告できればと考えております。
和菓子は緑茶との相性を基本につくられていますが、お茶を点てて一服する機会などほとんどなく、最近では急須でお茶を淹れて飲むことすら少なくなり、空のペットボトルばかりが増える生活となっています。
こんな日常を改めるためにも居住まいを正して和菓子、特に雅な京菓子をいただくのは、いい機会になるかも知れません。
(五十嵐 幸夫)