視覚障害をもつ方々の「生の声」を、お伝えしていくこのコーナー。第11回目はライトハウス内で働く視覚障害職員お二人に集まってもらいました。また助っ人に、元ホームページ委員の松田さんにもご参加いただきました。

久保 視覚障害をもつ職員として、注意していることや、意識して取り組んでいることがありますか?
橋本 見えないことで、どうしてもできないってことがあります。だから、私は「自分ができる」ことを、確実にこなすということに気を付けているかなー。それとともに、「できること」の幅を広げようという意識を常にもつことも大切だなと感じています。
久保 「できること」の幅を広げるということでは、最近幅が広がったなと思うことはある?
橋本 私は生まれつき視覚障害をもっていることもあってか、比較的記憶力はいいほうなんです。だから、職場全体の動きを見て、「あ、これ漏れてるんじゃないかな」とか、利用者さんに対して「これ、まだ伝えきれてないんじゃなかったかな」など、チェックしていこうという意識をもつようになってきたかな。少しうるさいおばさんみたいだけどね。
久保 同じ部署で働く私としては、橋本さんの、その記憶力には、随分助かっていますよ。記憶力を保持していく秘訣などあるの?
橋本 特にはないけど、これは多分忘れそうだなと思うことは、点字で書いたり、パソコンで入力しておいたり、必ず記録するようにはしてるかな。
久保 本題とは少し離れるけど、電話番号などは、どのようにして記憶に残っていくんだろうね。20歳を過ぎて点字を使うようになった私の場合は、聞いたり、点字で読んだ番号を、いったん頭の中で普通文字に置き換えて、その普通文字の字ずらで記憶しているように思うんだけど。
橋本 点字の形、字ずらというか、点ずらで記憶に残ってるのかなー。音で聞くだけでは、どうしても記憶に残りにくいですね。
野々村 実際に電話した際のプッシュした指の動きで記憶に残ることもありますね。
久保 野々村さんは、注意していることや、意識的に取り組んでいることなどありますか?
野々村 仕事柄情報を発信する立場でもありますので、当事者として、できるだけ情報を収集しようという気持ちは常にもっています。収集した情報を、まずは職員に会議やメールの一斉送信で提供するように心がけています。また「視覚障害者とは」とか、「京都ライトハウスとは」というテーマで人前でお話しすることも多いので、自分の部署のことだけでなく、ライトハウス全体のことを知っておかなければならないということも常に意識していますね。
久保 いつでもお話しできるように、常に準備してるんですね。
野々村 それとともに、私自身は全盲なのですが、視覚障害についてお話しする時は、全盲の立場だけではなく、ロービジョン(弱視)の方たちのことも合わせてお伝えするように工夫しています。
橋本 情報収集・発信という意味では、パソコンでも点字についてでも、それから最近ではタブレット等の機器でも、利用者さんからだけでなく、職員からもいろいろと質問されることが多くあります。もちろん私たちは当事者として、それらを使っているので、視覚障害者がどうしたら使えるのか、どう使っているのかを答えていくことも大きな役割なんだけど、まだ若い職員に対しては、実際に使ってみよう!と、促していくことも役割なのかなと感じています。
野々村 私は、小さい頃からこのライトハウスを利用してきており、館内で誰かと出会った時に、自然に「こんにちは」というあいさつをしてもらえることを、とても気持ちよく感じていました。利用者さんにも、ボランティアの方々にも「またライトハウスにきたいな」と思ってもらえるように、気持ちよくあいさつできるようにしたいですね。
橋本 そうそう、最近よく思うんだけど、視覚障害者はフットワークを軽くしておかないといけないなと思いますね。利用者さんへの応対もそうだし、電話を取るということ一つをとっても、フットワーク軽く対応しないと、周囲からも「動かない人」として見られて、結果的には職場内でできることが減ってくるんじゃないかな、と感じますね。
久保 私、最近フットワーク重たくて…。少し反省します。
橋本 それはフットワークより、体重が重たくなってんじゃない?
久保 フットワークの軽さ、という意味では、松田さんなんかは軽いほうではないの?
松田 ぜんぜん軽くないですよー。
久保 でも、名札と一緒に付いてる鈴の音が、3階の廊下からよく聞こえてきますよ。
野々村 それがせわしくない程度に、「元気」というイメージをもってもらえるなら、きっといいことですよね。
久保 そうですよね、元気さを皆に感じてもらえるような施設ってのは、とてもいいですよね。
松田 お二人は、他の職場で働いている視覚障害をもつ人たちの話も聴くことあると思うんだけど、それと比べて、ライトハウスのいいところ、悪いところって何かありますか?
橋本 たとえば「廊下にものを置かないで」とか、「声かけして」など、「こうしてほしい」という基本的な配慮について、あえて説明しなくてもわかってもらえているということ自体が、とても楽ですね。他の職場だったら、配慮以前に、「視覚障害とは」とか、「見えなくてもこれならできるんです」ということから理解してもらわなければならないのだと思うけど、その理解してもらうまでのしんどさはないですからね。それに業務として自分がやるべきことがしっかりあって、ある程度自分の持ち場があるということも、どんなにありがたいかと、つくづく感じますよ。
野々村 回覧物を読んでもらったり、伝言を点字や口頭で教えてもらったりできますので、随分助かっています。ただ、他の場所に行くと、そうではなくて、必要な援助を、しっかりこちらから言葉にしていかないといけません。「こんなことも知られていないんだ」と感じることもたくさんあります。私たち職員としては今の恵まれた環境に感謝するだけでなく、他の職場でも、このような配慮があれば、視覚障害をもっていても働けるんだ、ということを伝えていくことも役割なのだと感じています。
久保 何らかの形で具現化していくことができればいいですね。
野々村 今の職場ではいろいろと配慮してもらってることがありますが、うれしいのは、何かをおねがいした時に、イライラを表に出されないことなんです。
久保 イライラ感たっぷりだと、お願いしたくてもできなくなるもんね。
(次号に続く)

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4人で熱く語り合う様子。右手前から野々村さん、橋本さん、左手前から松田さん、久保