「かたつもり」第三話「どんなキャンパスライフを送ったの?」
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「わかったつもりのかたつもり」第3回は、情報制作センターで点字校正をされている吉田さんとの対談となりました。話し上手で、快活な吉田さん。今回は、吉田さんの学生生活についてお伺いしました。なんと、学科首席で大学を卒業されたとか!!すごい!では、吉田さんのキャンパスライフ、お楽しみください。
かたつもり第3回「どんなキャンパスライフを送ったの?」
吉田:私、小学校・中学校と盲学校に通っていて、ずっと一人クラスだったんですよ。(盲学校は学生数が少ないため)だから、同級生っていなくて・・・。高校生になって初めて、5人同級生ができてすごくうれしかった。で、大学に進学したらそれはそれは、たくさんの同級生に出会うことができて、めちゃめちゃ楽しかった!
齋藤:高校まで盲学校に行っていたんだったら、急に大学で環境が変わって、大変だったってことはないんですか?
吉田:全くないですよ!今までで、一番楽しい学生生活でした。大学受験を考えたときに、今まで視覚障害者を受け入れたことのない大学に入学したいって思ったんです。初めて受け入れてもらえるところに行きたいって。
齋藤:どうして?いちから始めるのって、とっても苦労しそうじゃないですか?
吉田:後輩たちのためです。点字受験っていうだけで、「受け入れられません」って断られることもあったけど、それでも後に続く後輩のことを考えると、新しく切り開きたいって思いました。
齋藤:※点字受験されたんですね。
吉田:はい。光華女子大学を受験しました。入試前に、盲学校の高等部の先生と、大学の入試部の担当者と私で何度も打ち合わせをしました。受験のことも、入学後の受け入れについても、親身になって一緒に考えてくださいました。本当にありがたかったです。
齋藤:それで、無事合格された。
吉田:はい。合格してから入学するまでに、大学内に※点字ブロックを設置してくださったり、各窓口の担当者を決めて下さったり、そして※音声パソコンや※点字用プリンターも大学が購入してくださいました。また、※ブレイルメモまで購入して貸与してくださいました。
齋藤:至れり尽くせりですね。点字ブロックの設置には立ち会われたのですか?
吉田:もちろんです。必要最低限設置していただきました。たくさんあっても、逆にわかりにくくなるだけですから。
齋藤:実際、授業が始まってからはどうでしたか?どんなふうに授業を受けたり、レポートや定期試験を受けていましたか?
吉田:まず、大学とのやり取りの中で、大学で出されるプリントは点字で出してもらえるが、教科書については、自分で※点訳をお願いすることになっていました。インターネットの掲示板で、※点訳ボランティアさんを募って、点訳をお願いしました。ありがたいことに4か所くらいの団体から受けてあげるよと返信いただきました。
試験については、点字で出題を受け、パソコンで回答していました。フロッピーに保存して、印刷して提出という流れです。論文やレポートも同じです。図書館のプリンターの隣に専用の席を準備してくださったんです。そこに行けば自分でプリントアウトができました。授業終わりに提出する小レポートは、メールで担当の先生に送信するという形で提出していました。困ったのは、授業の度に提出しなければならない出席カードです。これについては、自分では何ともならなかったので、近くに座っている人に声をかけ、お願いしていました。でもそれが逆に友達を作るチャンスになりました。中には、一度お願いしただけで、次回から必ず2枚もらって来てくれて、「提出しておくから」と言ってくれる友達もいました。先生によっては気を利かせて下さり、私の分を書いて下さることもありましたが、私にとってこれは、友達を作るチャンスを奪われた感じがしました。
齋藤:そうやって、ピンチをチャンスに変えて、友達もどんどんできたわけですね。とっても前向きですね。そして積極的。
吉田:入学当時は、大学から、当面の間ボランティアをつけましょうか?と提案があったんですが、断りました。そうなれば、私の隣にいつもボランティアさんがいることになって、周りの人が話しかけずらくなるって思ったんです。自分から助けを求めることができますから。
齋藤:なるほど。困ったときには、周りの人に助けてもらえばいいんですもんね。
吉田:さらに、大学側で、私について詳しく紹介している文書が準備されていたんです。A4用紙5枚にわたって!初めて受ける授業の担当者には、それが渡されていて、私が困ることがないように配慮されていました。これには驚きました。
齋藤:なんだか、すごいですね。大学側の情熱。
吉田:卒業した今も、大学に足を運びます。大学の授業に「女性のキャリアデザイン」という授業があって、自分史を語るという内容なんです。私、毎年出演させていただいています。
齋藤:大学と吉田さんは、相思相愛って感じですね。吉田さんの力が発揮できるよう、できる限りのサポートをしてくれた大学に、吉田さんは、しっかりと答えた。持前の明るさと、積極性がそれを支えてくれたんですね。すごいなー。
吉田:夢や目標は、叶えるためにあると思っています。だからそんなに高いハードルを飛ぼうとは思いません。実現可能な目標を設定します。
齋藤:次の目標も、きっとしっかり実現されるんでしょうね!また聞かせてください。今日はありがとうございました。
※点字受験
一定の基準を満たす障害程度であれば、点字での受験が認められる。特別措置として受験時間の延長(1.33倍)が認められている。
※点字ブロック
道路などに貼られた視覚障害者のための誘導の目印。一時停止を促す“点ブロック”と、歩く方向を示す“線ブロック”がある。黄色の点字ブロックは弱視の人にも分かりやすく誘導の助けになっている。
※音声パソコン
市販のパソコンに音声読み上げソフトをインストールしたもの。ホームページ閲覧用ソフト、メールソフトなどがある。音声の質や大きさ・速さも選択できる。
※点字用プリンター
パソコンで製作した点字データを打ち出す機械。墨字も一緒に印刷できるものや、点字の図を印刷できるものもある。
※ブレイルメモ
点字を書いて、直接手で確認できる機会。時計やアラームの機能も備え、またパソコンとケーブルで繋いでデータの送受信ができる。いわゆる点字のパソコン。
※点訳
墨字の文章を点字にすること。