「興味 心・深」第2回 岡田太丞②
公開
※同じ視覚障害をもつライトハウス職員が、視覚障害をもつ方々の「生の声」を、お伝えしていくこのコーナー。
第2回目は前回に引き続き、「かがやく視覚障害者の皆さん」のコーナーにもご出演いただいた岡田太丞(おかだ たいすけ)さんに、岡田さんご自身のお仕事について語っていただきました。
第2回 岡田太丞(おかだ たいすけ)さん
久保 | 岡田さんは、多くの健常者の方とお仕事されているわけですが、仕事上で同僚の方にどのようなことをサポートしてもらっていますか。 |
---|---|
岡田 | そうですね、色々とサポートしていただいております。何から言えばよいかですが、1つは社内での移動です。自宅から会社までは、サポート無しで単独で通勤していますが、社内での各種移動に関しては社員の皆さんがサポートしてくれています。 |
久保 | 具体的にはどのようなところへですか。 |
岡田 | 基本的には社内の移動全般です。例えば、医務室へ行く時や、お手洗いに行く時などに移動のサポートをしてくれます。あと、昼食時は、食堂までサポートしてくれますが、その時は上司が手引きをしてくれます。食堂では時には上司がテーブルまで食事を持ってきてくれます。 |
久保 | 良い上司の方々に恵まれておられますね。 |
岡田 | そうなんです。優しい上司、先輩、同僚ばかりでありがたい限りです。復職当初は私と一緒に仕事している女性スタッフと一緒に昼食を食べておりましたが、最近では、同じ部署の上司、先輩、そして後輩達と一緒に昼食を食べるようになりました。昼食を取りながら仕事上での様々な情報交換をすることができますよ。 |
久保 | 情報交換は大切ですからね。業務上でのことはいかがでしょうか。 |
岡田 | 執務上での具体的なサポートについては、女性スタッフに、PDFで来る様々な情報を私が聞き取りやすいようにワード化してもらっております。またレポートなど作成した文書のレイアウト等、どうしても目で確認しながらでないと難しいことについては、スタッフに任せております。 あと色々とありますが、やはり音声で読み上げてくれない文書について、どのような内容が記載されていたかを口頭で教えてもらったり、あくまで可能な範囲ですが、音声でも私が確認できるように、ワード化するなど、ひと手間かけてもらうこともあります。 |
久保 | では、視覚障害者の一般就労がより進むために、企業など、雇う側の方々に、どんなことを知ってほしいですか。 |
岡田 | そうですね、これも色々あるとは思いますが、まずは何といっても、「目が見えない=何も出来ない」というふうには考えてほしくないですね。しかし現実には、そのように考えている企業が多いとは思いますので、私を含めて、視覚障害者であっても、一般企業で事務職として仕事している、そのような視覚障害者が存在しているという事実を、より多くの企業に認識してほしいですね。 |
久保 | そうですよね、やはり目が見えないと何も出来ないと考えている企業は多いのかもしれませんね。 |
岡田 | また、現在の世の中では、やはりパソコンを使えないとなかなか企業での仕事は難しいと思います。企業のほとんどは、視覚障害者は目が見えないので、パソコンを使っての仕事は無理だと思い込んでいると思いますが、音声読み上げソフトや拡大補助具を利用すれば、視覚障害者でもパソコンを利用した様々な仕事ができる、そういったことを理解してほしいですね。 そもそも音声読み上げソフトの存在を知っている企業が何社あるか・・残念ながら、日本の企業の大半は知らないと思います。これについては、私を含めて、当事者や、その関係者がもっと企業や社会に知ってもらえるように声を上げて広報活動・啓発活動をしないといけないですよね。 |
久保 | そうですよね、私たちのような支援する立場の者と、岡田さんのように実際に就労されている方々が一緒になって、取り組んでいくべき課題ですよね。 |
岡田 | 自宅から会社まで単独歩行にて通勤できるのか?ということも、雇う企業側が心配することの一つだと思います。しかし、このことについても、ライトハウス等の施設でしっかりとした歩行訓練を行えば十分に可能なことだと企業側には理解してほしいですね。 パソコンについても、単独歩行についても、事前の研修というか、練習が必要となりますので、企業側には、それらの研修を合わせて認めてほしいと思います。 あと最後に、私のような中途視覚障害者に関しては、仮に、今まで行なってきた仕事が出来なくなったとしても、その人の社内での経験やスキル等々から、何かできる仕事はないか?そういったことを企業側も様々な観点から本人と一緒になって考えてほしいと思います。絶対という言葉は使えませんが、私は、企業側が真摯に考えてくれるなら、何かできる仕事が見つかると思っています。もちろん、そこにはご本人のやる気が前提となりますが。 |
久保 | そうですよね、「一緒になって考える」という姿勢を少しでももってもらえると、随分変わってくるような気がしますね。ところで、岡田さんの理念として、企業のCSR(企業の果たすべき社会的責任)やダイバーシティといわれる多様性の享受の考え方について、強いお気持ちをもっておられるようですが、そういった観点からはいかがでしょうか。 |
岡田 | ダイバーシティといえば、女性の戦力化といったことが未だにメインのようになっていますが、女性の戦力化といった話は、もはや当たり前の時代だと思うのですよ。そこで、例えば、弊社の会社案内等で、視覚障害を負ってしまった職員でも、こういった内容にて戦力として活躍している・・といったことを社会に向けて発信してほしいと願っています。それは、弊社の企業としてのプレゼンスを高めるだけでなく、社会全体への啓発活動につながることになるのではないか・・と考えておりますが、それには私がもっと活躍しないといけませんね(笑) |
久保 | いやいや十分にご活躍されていると思います。実際に就労しておられる方、そして雇う側が一緒になって、視覚に障害があっても、事務職として働いていけるということを広めていける、そんなスタンスが望ましいですね。 |