第5回 高校教諭 山本宗平(やまもと そうへい)さん
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今回は、あいあい教室をご利用されていた山本宗平さんです。
2003年から大阪府立高校教諭として英語を教えています。今年度は3年生を担任していて、今は夏期講習や保護者懇談をしているところです。
僕は生まれつきの視覚障害者で、小・中・高と地域の学校で学んできました。高校のとき、いろんな先生に夜遅くまで補習をしてもらったり進路の相談に乗ってもらったりしてたいへん嬉しかったのですが、それと同時に「先生というのはすてきな仕事だな」と思うようになりました。大学生のとき、教育実習をしたのですが、そのときに「教員という仕事は間違いなく視覚障害を大いに活かせる仕事だ」という確信を持ち、今の仕事に就きました。
4月の始めの担任発表のとき、僕は体育館の前のステージに、他の担任の先生たちとともに、白杖を持って並んでいます。生徒たちは「あの人はどうやって担任をやるのだろうか?そもそも、授業は大丈夫なんだろうか?」と思うかもしれません。そう思ってくれてこそ、僕は存在意義を感じるのです。
黒板にチョークで書くのが難しいのなら、他にも方法はあります。僕はパソコンで板書内容を書き、それをプロジェクタで黒板に映しています。文字が小さかったり、うまく映っていなかったら生徒が教えてくれます(そうしないと、板書なしの授業を受けなければなりませんからね)。教科書は点字のものを用意するのに多少のエネルギーは要りますが、できあがってしまえば問題なく授業ができます。プリントは僕が配るより生徒に配ってもらった方が速いので生徒にお願いしています。生徒の名前と声を一致させるのに時間がかかるので、こちらが慣れるまでは、話しかけるときは名前を言ってから話しかけるようにもお願いしています。日直には学級日誌を読み上げてもらうことにしています。校外では生徒に手引きをお願いすることもあります。
慣れるまではお互いに試行錯誤の日々ですが、それもなかなか新鮮で面白いものです。生徒は大人よりも順応性が高いので、他の先生とやり方が少し違っていても、わりと速くなじんでくれるように感じます。4月当初に感じていた「目の見えない先生で大丈夫なのか?」という気持ちは、次第に「目の見えない先生なりのやり方があるから大丈夫なんだ」というふうに日々のやりとりを通して変わっていきます。この変化は僕としても居心地がよくなるし、生徒たちにとっても学びや気づきになって一石二鳥だと思います。
生徒たちに望むことがあります。これからの長い人生の中で、うまくいかないこと、挫折することを経験するときがあると思います。そのときに、高校のときに出会った山本のことをちょっと頭に思い浮かべてほしいのです。「目の見えない山本が担任を持つのは不可能だ」と最初思っていたけれど、少しやり方を変えれば、まあなんとかなっていたなあ、ということを。「自分で不可能と決めつけたらそこで終わってしまう。やりかたはいくらでもあるんだから、少し発想を変えてみよう。そうすれば突破口が見えてくるのではないだろうか」というふうに考えてくれることを僕は期待しています。