新人職員齋藤が、視覚障害をもつ先輩職員久保さんに質問するコーナーです。「見えない・見えにくい人たちって、こんな時どうしてるんだろう?」 そんな素朴な質問を通して、「知ってるつもり」から、視覚障害をもった方々への理解につながれば何よりです。さて、記念すべき第1回目は?

久保弘司(くぼ こうじ)
鳥居寮・訓練士。40代・男性
大学3回生の1993年、緑内障にて全盲に。94年から京都ライトハウス「鳥居寮」にて訓練を受け大学復帰。
2000年からは、古巣の「鳥居寮」で、今度は支援員として就職。
主に点字・パソコン訓練を担当。べたべたの広島弁をまきちらしながら、ライトハウス内を駆け回っています。

齋藤聖子(さいとう しょうこ)
相談支援室・相談員。30代・女性
大学卒業後、知的障害者通所授産施設や、精神障害者復帰施設などで支援員として働く。2010年から、京都ライトハス相談員として就職。視覚に障害を持たれた方との関わりはここがスタート。 やっと2年が経過し、まだまだ駆け出しの新人職員。

第一話「どんな風に服を選ぶの?」

齋藤:「久保さん、洋服ってどこで買ってますか?」

久保:「大手の衣料品店とかが多いかな・・・・。店員さんなかなか親切だし、「○○が特売品」とか、「○○を3枚買うと2980円になりますよ」なんて、風に、店内放送も結構多いんだよ。音声での情報は、見えない僕にとって、大切な情報源になるからね。」

齋藤:「なるほど店内放送もポイントなんですね。お店には、一人で行くんですか?それとも、誰かと行くんですか?」

久保:「友達と行くことが多いかなぁ」

齋藤:「友達?!男の人ですか?女の人ですか?」

久保:「それはねぇ、女友達が多いかな。やっぱり男友達と行くより、女友達の方が収穫が多いよ」

齋藤:「収穫?」

久保:「人によるとも思うけどね、女の人は買い物好きでしょ。女友達と行くといろんなアドバイスもらえるしね」

齋藤:「なるほど。どうやって誘うんですか?」

久保:「買い物行かない?晩御飯も一緒にどう?って感じかな。買い物だけ付き合わせるのも、なんか悪いしね。その方が楽しいし」

齋藤:「一回の買い物にどれくらい時間ってかかるもんですか?」

久保:「僕の場合は30分くらいかな?」

齋藤:「えっ、短いですね」

久保:「いろいろ買い込むタイプでもないし。ほら、服ってサイズとか流行とか変わりやすいでしょ。女友達と買い物行くようになってね、今までの自分の洋服選びの視点が変わったよ。例えば、シャツを買うにしても、自分はMサイズだって思ってそれを基準に買っていたけど、一緒に行った子にSサイズを勧められて試着てみたら、フィットした感じで着られたりする。今までは洋服の色とか、素材とかを基準に選んでたけど、誰かと一緒に行くと、その時のトレンドも取り入れることができたり、新しい着こなしに挑戦してみたりもできる。」

齋藤:「だから、久保さんはおしゃれなんですね。」

久保:「ありがとう。こうやって、だれかにほめてもらったりすると、自分なりに変てこな服装じゃないって、安心できるよ。逆に、コーディネートが変だよとかストレートにいってくれる人って、なかなか少ないんだよね。もちろんその人との関係性もあるけど、ストレートに伝えてくれることから、また新たな関係性が作れることもあるしね。」

齋藤:「では、朝、今日着る服をコーディネートする時、何か工夫していることありますか?どれが、このシャツに合うズボンなのか?どうやってコーディネートしてますか?」

久保:「僕の場合だけど、ベースとなる組み合わせを作っておき、それを基にシャツやズボン、上着を切り替えてるんだ。つまり、シャツA、ズボンA、上着Aというベースとなる組み合わせを考えておくんだ。この組み合わせは、晴眼者の友人などに見てもらって無難な組み合わせを教えてもらうようにしてる。

もちろんいつも傍に友人がいるわけではないので、どれがシャツAなのか、どれがズボンAなのか、僕一人でもわかるようにしておかなければいけないよね。他の服と間違えないように、僕は※タックペーパーや※タックシールに点字でメモ書きしたものをポケットに入れておいたり、片付ける場所を変えたりしてるんだ。

このベースとなる組み合わせを基準に、例えば、今日はシャツだけ、シャツAからシャツBに変えてみたり、上着だけ上着Aから上着Bに変えてみたりと、部分部分に変えていっていくようにしてる。でも、数日経つと、「いったいどんな色合いの組み合わせになってるか、わからない!」ってことになるよね。そんな日は、またベースとなる組み合わせに戻るんだ。

また視覚障害の友人の中には、その日の組み合わせを、携帯電話で写真を撮り、それを晴眼者の知り合いに送って、アドバイスを受けるという人もいるよ。

(※タックペーパーやタックシールは用具・機器展示販売でも取り扱っております。)

見えない・見えにくい人の中にも、もっといろいろな工夫をしている方もおられるはず。「こんな工夫があります」、「こんな道具を使えばもっと楽になります」といったご意見がありましたら、また、「こんなこと聞いてみたいんだけど…」、「こんな時はどうしているの」など、ご質問がありましたら、「京都ライトハウス」までお知らせください。