第11回 メルマガ色鉛筆 編集企画担当 石川佳子 「一人ぼっちじゃない!を知ることからはじまる一歩へ」
公開
見えないお母さんとして生きること
私は、生まれつきの弱視で、見える人の中のたった一人の見えにくい自分として32歳まで過ごしました。支援や情報に辿り着くことなく、虫メガネだけを頼りに必死にいろんな工夫をしながらの学生生活を過ごしました。私を助けてくれる家族や友達、恋人はいても、いつも「一人ぼっちの私」が心の中にいました。フリーランス契約のライターとして活動していましたが、25歳になった頃から、初めて訪ねる取材先に一人で辿り着くことが困難になり、書くことで自分の道を見出すことをあきらめてしまいました。結婚後、自分の見え方が重度の障害であることを知り、点字講習会に参加したことをきっかけに、手で読める言葉の魅力に魅かれ、私は鳥居寮での訓練につながっていくことができました。不妊治療しながらの訓練は、「いつか我が子を膝にのせて絵本を読んでやりたい」という未来を信じる力に支えられたものでした。見えないお母さんとして生きる私は、たくさんのママ友に支えられた子育ての中で、心のバリアフリーを感じることができました。
想いを分かち合える「きららの会」の仲間たち
私は20代から40代の視覚障害者ネットワーク「きららの会」の京都地区リーダーをさせて頂いています。若い世代ならではの分かち合いを通して、「一人ぼっちじゃない自分」と出会うことができました。おしゃれや恋愛、仕事、子育て、趣味、スポーツなど、同世代ならではの「どうしたらできるだろう」を一緒に考えながらいろんな企画にトライし活動しています。
メルマガ色鉛筆 見えない・見えにくい人の暮らしの中のあれこれを伝えたい!
見えない・見えにくいということ、見えなくなるかもしれないということは心に暗闇を連れてきます。そこには不安と孤独が共存しています。支援や制度、仲間との交流につながることの重要性は言うまでもありませんが、暗闇に光を届けるその前段階として、どんな状況にある人にでも、まず「知るだけ」のつながりを提示することができます。どんなふうに料理するの、勉強するの、働くの・・・という生きる術全てに対しての不安は、障害を得た多くの人が自分自身の心に投げかける言葉です。自分と同じように問いかけ、七転八倒の今を生きる仲間の声から「一人ぼっちじゃない」を感じてもらいたい、メルマガ色鉛筆はそんな思いから生まれました。はじめの一歩が踏み出せるタイミングは、誰にもわかりません。それは、支援者にも医師にも家族にも、そして本人にもわかりません。でも、「一人ぼっちじゃない」ことだけはメルマガが届く限り、伝わります。不安と孤独のトンネルにある仲間に継続的な声かけをする、それだけでも尊いことだと私は考えています。
まだ見ぬ仲間からもらった温もりの意味
私は色鉛筆の編集企画を通して、ライターさんの思いに寄り添い、時には言葉の裏側にある見えない声に耳を澄ませ、それを色鉛筆らしく読者へ届けたいと考えております。色鉛筆のレポートは、決して投げかけやアドバイスをするものではありません。ライターはあるがままを伝えるだけ。「そんな人もいるんだな」と軽い風のように送り出し、読者の皆様には自由にレポートと対話してもらえたらと思います。
また、全国の読者と、色鉛筆の主旨に賛同して下さる医療・福祉・教育関係者の皆様にメルマガ色鉛筆はご活用頂いております。「病気のことを受け入れられない」、何も考えられない」という人に、色鉛筆チラシを手渡したら、「これなら読めるかもしれない」と話されたというご連絡を頂きました。医療から福祉への連携のワンクッションツールとして色鉛筆をとらえて頂ければ幸いです。
メルマガ色鉛筆の創刊により、全国のまだ見ぬ仲間とつながることができました。一人ぼっちじゃないを伝えたい、その思いで生まれたメルマガ色鉛筆。今、全国のまだ見ぬ仲間との出会いにより私自信が一人ぼっちじゃないという温もりを感じています。送り出した思いが、皆様の心を通して私のもとに届いたのです。この温もりの意味を、障害を得て生きる意味を、いつも問いかけながら、毎号カラフルなライターとともに心をこめてレポートを送り出していきたいと思います。
メルマガ色鉛筆の活動は、「まず知る」の一歩にしかすぎません。はじめの一歩は、リアルな人とのつながりの中にこそ力を発揮します。もし、色鉛筆のレポートから元気をもらえたという方がおられたら、どうかその力で誰かと、どこかとつながってください。そんな勇気ある一歩が、まだ見ぬ仲間の内に生まれることを心から祈ります。
石川佳子プロフィール
1970年京都市生まれ
2001年網膜色素変性症で手帳取得。
2002年きららの会入会 現在京都地区代表として活動
2012年4月よりFSトモニーにて就労移行支援を受ける。
2013年11月メルマガ色鉛筆(京都府視覚障害者協会発行)を創刊し 編集企画を担当。
2014年4月より京都ライトハウス生活訓練部鳥居寮に勤務。