「いてっ!」 ある平日の朝、袖を通すと右指にチクッと何かが刺さった感じがした。そのまま衣類を裏返そうとする私に、たまたま居合わせた娘は「叩け!」。むやみやたらとひっくり返して得体の知れぬものが出てくるのは二次災害になるという訳だ。そうこうする間に、刺された右の中指はじわっと腫れてくる。腫れと痛みによる怒りが沸々と込み上げつつも、そろ~っと袖を覗きこむと、確かに何かがいる。ここや!と狙いを定めて15秒ほど、棕櫚ほうきでバンバン叩きまくった。
再び、そろ~っと袖を覗く。さすがに敵は息絶えた様子。それでも用心して服を裏返しにすると、黒くて丸々とした虫がいるではないか。すると娘、スマホで写真を撮り「…クマバチ?」と推察。へぇ~、便利。…などと感心している暇はない! すぐさま駆除して患部を水で流した後、家にあった軟膏を塗り、職場へと急いだ。ちなみに指の腫れは、翌日には元に戻っていた。皆さん、黒い服にはご用心。
「ボンッ!」 ある土曜の朝、電子レンジで温めようとすると突然レンジからそのような音がし、何かが焼け焦げたような匂いがした。調理した香りではなく、いかにもおかしい、化学物質系の何かだ。こらアカン、とすぐさまレンジを止め、窓を全開にして換気する。独特の匂いが消えるのに十数分。ここのところ確かに調子がよろしくなかったけれど、つい30分ほど前、娘が使っていた時は普通に温めてくれていたではないか…!
翌日、新たなレンジをお迎えに家電量販店へ。ほほう、今のレンジはテーブルが回らないのか。思えば20数年の月日を共にしたが、突然の別れはあっけないものだった。
所属長を拝命して5年目。私にとっては踏んだり蹴ったりの始まりだったが、今年度からは障害のある人への合理的配慮が全業種において義務づけられている。困りごとがあった時、どちらか一方だけが主張するのではなく、対話により互いの落としどころを見つけることが大切。また対話は、長い時間はかかるかもしれないが信頼関係の構築に欠かせないもの。私を含め、ステーションは引き続き、利用者やボランティアの皆さんと気軽に話せる存在でありたいと思っている。

(はなのぼう5月号より)